不動産所得の必要経費一覧|経費になる・ならないものと科目対応
不動産所得の必要経費になるのは、賃貸のために直接必要だった費用です。固定資産税や修繕費、借入金の利子などが代表的ですが、ローンの元金、所得税・住民税、自宅部分の生活費のように、経費にならないものもあります。この記事では、必要経費になるもの・ならないものを青色申告決算書・収支内訳書の科目に沿って一覧にし、自宅兼事務所のように按分が必要なケースも説明します。
必要経費の基本的な考え方
この記事は令和7年分(2025年分)の制度で説明します。不動産所得の必要経費になるのは、「総収入金額を得るために直接要した費用」と「その年に生じた業務上の費用」です。支払ったかどうかではなく、その年の12月31日までに金額や内容が確定しているか(債務確定主義)で判断します。原則として、12月末までに管理業務の提供を受けて支払う義務が成立し、金額も合理的に計算できる12月分の管理料は、実際の支払いが翌年にずれても、その年の経費にできます(請求書が届いただけで、まだ行われていない作業の分は当たりません)。逆に、支払いだけ済ませていても内容が確定していない前払金は、その年の経費にはなりません。
経費になる主なもの(決算書の科目別)
青色申告決算書・収支内訳書(いずれも不動産所得用)には、経費の科目があらかじめ印字されています。帳簿を付けるときは、この科目を意識すると転記がスムーズです。
| 決算書の科目 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 租税公課 | 固定資産税・都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税 | 土地・建物にかかるこれらの税金は必要経費になります。固定資産税は原則として納税通知書が届いた年分の経費ですが、分割納付する税金なので「納期の開始日の年分」または「実際に納付した年分」に計上することもできます |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険の保険料 | 複数年分を一括で払った場合は、その年の分だけが経費で、残りは前払費用として翌年以降に回します |
| 修繕費 | 原状回復費、雨漏りの補修など通常の維持管理 | 価値を高めたり使用期間を延ばしたりする工事は「資本的支出」として減価償却になります。区分の目安は金額や周期です |
| 減価償却費 | 建物、建物附属設備、器具備品など | 現金の支出が無い年でも経費になります。平成19年4月以後に取得した建物と、平成28年4月以後に取得した建物附属設備・構築物は定額法です(それより前に取得したものは、取得の時期に応じた方法になります)。年の途中で貸し始めた年は、使った月数で月割りします。器具備品などは届出をすれば定率法も選べます |
| 借入金利子 | アパートローンなどの利息部分 | 経費になるのは利息だけです。元金の返済は経費になりません(次の節で説明します) |
| 地代家賃 | 自分が土地を借りている場合の地代、駐車場の地代など | 入居者から受け取る賃料(収入)とは別のものです |
| 給料賃金・専従者給与 | 従業員への給与、家族従業員への給与 | 生計を一にする親族への給与は原則として経費になりません。例外は青色申告の青色事業専従者給与で、不動産の貸付けが事業として行われている(事業的規模の)こと、その親族が年末に15歳以上で原則として年の6か月を超えて専ら従事していること、期限までに届出をしてその範囲で支払っていること、金額が仕事の内容に見合っていることなどが要件です。専従者給与は給料賃金とは別の欄(青色申告決算書の「専従者給与」)に書きます。事業的規模に当たるかどうかは実態に応じた判断になります |
| (科目名を自分で書く空欄) | 管理委託費、広告宣伝費(AD)、水道光熱費、通信費など | 書ききれないときは、金額の大きい科目を空欄に書き、残りは青色申告決算書なら「その他の経費」、白色の収支内訳書なら「雑費」にまとめます |
| その他の経費(青色)/雑費(白色) | 消耗品費、クリーニング代、管理組合費など | 個々の金額が小さい費用をまとめて書きます |
個人の事業税(課されている場合)も租税公課として全額が必要経費になります。決算書全体の書き方は青色申告決算書の書き方の記事、減価償却の計算は減価償却の記事と減価償却シミュレーションで詳しく説明しています。
経費にならないもの(元金・所得税・住民税・自宅部分)
家賃収入から引けそうに見えても、必要経費にならないものがあります。代表的な4つは次のとおりです。
| 項目 | 経費にならない理由 |
|---|---|
| ローンの元金(借入金の返済額) | 借入金の返済は、借りたお金を返しているだけで、収入を得るための費用ではありません。経費になるのは利息の部分だけです |
| 所得税・住民税 | 個人の所得そのものにかかる税金なので、必要経費になりません |
| 罰金・科料・過料 | 違反に対する制裁なので、業務上の費用とは認められません |
| 自宅部分の生活費(家事費) | 賃貸経営とは関係の無い、個人の生活のための支出です |
ローンの元金と利息の分け方、赤字の年に土地の借入利息が制限される仕組みは借入金利子の記事で計算例つきで説明しています。
自宅兼事務所などは「按分」が必要
自宅の一部を賃貸経営の事務所として使っている場合の家賃・水道光熱費・通信費のように、一つの支出が家事上と業務上の両方に関わる費用を「家事関連費」といいます。家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務のために直接必要であったことが明らかに区分できる部分だけです。区分できなければ、全額が必要経費にならない家事費として扱われます。
例:自宅の1室(床面積の20%)を不動産経営の事務専用スペースとして使っている場合
月の家賃12万円 × 床面積の使用割合20% = 24,000円が必要経費、残りの96,000円は家事費
按分の基準は、費用の内容に応じて実態に合わせて合理的に説明できるものを選びます。家賃や電気代のように部屋の使用面積が関係する費用は床面積の比、通信費のように部屋の広さと関係の無い費用は業務に使った時間の比、というように基準を使い分けます。何を基準にしたかは、あとから説明できるように記録しておきましょう。自動車の費用(ガソリン代・自動車税・車両の減価償却費など)を事業と私用の両方で使っている場合も、同じ考え方で走行距離などに応じて按分します。
まとめ払い・少額の資産の特別な扱い
火災保険のように複数年分をまとめて払った費用は、年ごとに分けて経費にします。対象期間と支払額から年ごとの経費と年末の前払費用を計算できるまとめ払いの按分(登録不要)を用意しています。
エアコンや給湯器のような設備は、取得価額によって「使った年に全額を経費にできるもの」「3年間で分けて経費にできるもの(一括償却資産)」「青色申告の特例で全額を経費にできるもの」に分かれます。ただし、令和4年4月以後に取得して貸付けの用に供した資産は、主要な業務として行う貸付けでない限りこれらの扱いが使えない場合があります(詳しくは減価償却の記事で説明しています)。詳しい金額の基準も同じ記事をご覧ください。修繕費か資本的支出かで迷う工事は修繕費か資本的支出かの判定(登録不要)で、国税庁の形式基準に照らした目安を確認できます。いずれも最終的な判断が分かれる場合があるため、迷うときは税務署・税理士に確認してください。
よくある疑問
自宅兼事務所の家賃や光熱費は全額経費にできますか
できません。業務のために直接必要であったことが明らかに区分できる部分だけが必要経費です(家事関連費)。床面積の比や使用時間の比など、合理的な基準で按分してください。
ローンの返済額が多いのに、経費が少ないのはなぜですか
毎月の返済額のうち、経費になるのは利息の部分だけで、元金の返済は経費になりません。元金は借りたお金を返しているだけで、賃貸経営の費用ではないためです。返済予定表で利息と元金を分けて確認してください。
どの申告書類のどの欄に書けばいいですか
青色申告の場合は青色申告決算書(不動産所得用)、白色申告の場合は収支内訳書(不動産所得用)の、それぞれの経費の欄に書きます。どちらも租税公課・損害保険料・修繕費・減価償却費・借入金利子・地代家賃・給料賃金といった科目が並ぶ作りです。青色申告決算書の各ページの書き方はこちらの記事で説明しています。
領収書や管理会社の収支報告書、返済予定表を大家のセンセイに読み取らせると、租税公課・損害保険料・借入金利子などの科目ごとに仕訳を作り、確定申告の転記表にまとめます。自宅兼事務所などの家事按分(事業に計上する割合)も仕訳ごとに指定でき、事業分だけが経費に、私用分は事業主貸(法人は役員貸付金)へ振り分けられます。使い方は使い方ガイドをご覧ください。
※ 本記事は一般的な制度の説明です。個別の事情による取り扱いは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
ほかのコラム
- 不動産所得の青色申告決算書の書き方|1〜4ページを順に損益計算書・収入の内訳・減価償却や借入金利子の内訳・貸借対照表を、様式の順に。
- アパートの減価償却の計算|耐用年数・中古の簡便法・設備耐用年数と償却率、取得した年の月割り、中古の簡便法、設備と少額の備品の扱い。
- 借入金利子は経費にできる?元金との違いと赤字の年の土地の利子返済のうち経費になるのは利子だけ。赤字の年は、土地を買うための借入の利子が損益通算できません。
- 家賃収入はいくらから確定申告が必要?20万円ルールと所得の出し方判定は「収入」ではなく「所得」。会社員は原則として所得20万円超で申告が必要です。所得税の確定申告をしない場合は、住民税の申告が必要になることがあります。
- 管理会社の収支報告書の見方|賃料・管理費・預り金と記帳の基本振込額だけでなく、賃料と管理費・修繕費を総額で分けて記帳するのが基本です。預り金はそのまま収入にしません。
- 国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識
- 国税庁 タックスアンサー No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
- 国税庁 タックスアンサー No.1379 修繕費とならないものの判定
- 国税庁 タックスアンサー No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分
- 国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし
- 国税庁 タックスアンサー No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)
- 国税庁 タックスアンサー No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
- 国税庁 令和7年分 青色申告決算書(不動産所得用)の書き方
- 国税庁 収支内訳書(不動産所得用)様式