借入金利子は経費にできる?元金との違いと赤字の年の土地の利子
アパートローンの毎月の返済額は、全額が経費になるわけではありません。経費になるのは利子の部分だけで、元金の返済は経費になりません。さらに、不動産所得が赤字になった年は、土地を買うための借入の利子にあたる部分を、給与などほかの所得と差し引き(損益通算)できません。この記事では、返済予定表から利子を拾う方法と、決算書への書き方、赤字の年の計算を順に説明します。
元金と利子の違い
借入金の返済額は「元金」と「利子(利息)」に分かれます。
- 利子:お金を借りた対価なので、賃貸のための借入であれば必要経費になります(決算書の「借入金利子」)。
- 元金:借りたお金を返しているだけなので、経費になりません。建物の代金は、借入で払っても自己資金で払っても、減価償却費として少しずつ経費になります。
元利均等返済では毎月の返済額は同じでも、その中の利子と元金の割合は毎月変わります(最初は利子が多く、だんだん元金が多くなります)。そのため「返済額×12か月」や「年初の残高×金利」で利子を見積もるのではなく、その年に返済日が来た回の利子を足すのが確実です。
返済予定表から1年分の利子を出す
金融機関から届く返済予定表(償還予定表)には、回ごとに「返済日」「返済額」「元金」「利息」「残高」が並んでいます。1年分の利子は次のように出します。
- 返済日がその年の1月〜12月の回を選ぶ(申告は暦年です)。
- その回の「利息」の欄を足す。
- 金利の見直しや繰上返済があった年は、見直し後の予定表で残りの月を拾う(古い予定表のままにしない)。
経費にするのはその年に支払うことが確定した利子です。12月の返済日の引き落としが残高不足などで翌年になっても、返済日が12月なら今年の利子として数えます。通帳の引き落としと予定表の利息が合っているかも見ておくと安心です。保証料や事務手数料は利子とは別の費用なので、借入金利子に混ぜないようにします。
決算書のどこに書くか
| 場所 | 書くこと |
|---|---|
| 1ページ目 損益計算書「借入金利子」 | その年の利子の合計(返済日がその年の回の利子。銀行などの借入も含めた全部)。 |
| 3ページ目「借入金利子の内訳」 | 金融機関以外からの借入の利子だけ(貸主の住所・氏名、年末の残高、本年中の利子など)。銀行・信用金庫・日本政策金融公庫などからの借入は書きません。 |
| 4ページ目 貸借対照表「借入金」 | 年初(期首)と年末(期末)の残高(65万円・55万円の青色申告特別控除を受ける場合)。 |
| 1ページ目「土地等を取得するために要した負債の利子の額」 | 不動産所得が赤字のときだけ。次の節で説明します。 |
3ページ目の表の題に「金融機関を除く」とあるのを見落として、銀行の借入まで書き込んでしまう方がよくいます。銀行からの借入だけなら、この表は空欄のままで構いません。
赤字の年の「土地の利子」
不動産所得が赤字になると、その赤字は原則として給与所得などほかの所得から差し引けます(損益通算)。ただし、赤字のうち土地(借地権を含む)を取得するために借りたお金の利子に相当する部分は、損益通算できません(租税特別措置法第41条の4)。
損益通算できない金額は、次のどちらか少ないほうです。
- 不動産所得の赤字の金額
- 土地を取得するための借入金の利子の額
つまり、赤字が土地の利子より小さければ赤字の全額が損益通算できず、赤字が土地の利子より大きければ、土地の利子の分だけが損益通算できません。黒字の年はこの計算は要りません。
土地と建物をまとめて借りたとき
アパートを土地付きで同じ売主から1つの契約で買い、ひとつのローンで払った場合、借入金のうちどれだけが土地の分かは区別しにくいものです。このときは、借入金はまず建物の取得に充て、残りを土地に充てたものとして計算することができます(租税特別措置法施行令第26条の6第2項。選べる計算方法です)。建物の価額が大きいほど土地の分は小さくなり、借入金が建物の価額以下なら、土地の利子は0円です。
土地に充てた借入金 = 借入金 − 建物の取得価額(マイナスなら0円)
土地の利子 = その年の利子 × 土地に充てた借入金 ÷ 借入金
仲介手数料などの諸費用まで含めて借りた場合など、借入金の中に土地・建物の代金以外の分が含まれるときの数え方は、個別の事情によります。迷う場合は税務署に確認してください。
計算例
次の物件(同じ売主から1つの契約で買い、建物から先に充てる計算を選んだ場合)で、ある年の不動産所得が50万円の赤字だったとします。
| 取得価額(土地+建物) | 8,000万円 |
|---|---|
| うち建物 | 5,000万円 |
| 借入金(取得のための借入) | 7,000万円 |
| その年の利子(返済日がその年の回) | 140万円 |
| 不動産所得 | ▲50万円 |
土地に充てた借入金:7,000万円 − 5,000万円 = 2,000万円
土地の利子:140万円 × 2,000万円 ÷ 7,000万円 = 40万円
損益通算できない金額:赤字50万円と40万円の少ないほう = 40万円
この場合、ほかの所得と差し引けるのは赤字50万円のうち10万円だけです(申告書に書く不動産所得は△10万円)。決算書1ページ目の欄外「土地等を取得するために要した負債の利子の額」には40万円を書きます。
もし借入金が5,000万円(建物の価額以下)だったら、土地に充てた借入は0円になり、赤字50万円の全額を損益通算できます。
よくある疑問
返済額を全部「借入金利子」にしてしまっていました
元金の分は経費になりません。返済予定表で利子と元金を分け、元金の分は借入金の減少として記帳し直します。過去の年分に誤りがあった場合は、修正申告が必要になることがあります。
土地の利子は黒字の年も計算するのですか
いいえ。損益通算の制限は不動産所得が赤字のときだけです。黒字の年は、利子の全額をそのまま必要経費にします。
物件が複数あるときは
土地の利子は物件ごとに計算して合計します。赤字かどうかは、すべての物件を合わせた不動産所得で判定します。
返済予定表を物件ごとに登録しておけば、年ごとの利子と年末の残高をまとめて出せます。物件の取得価額・うち建物・当初の借入額を入れ、借入が取得のためのものか確かめておけば、赤字の年の土地の利子の計算まで出せます。
※ 本記事は一般的な制度の説明です。個別の事情による取り扱いは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
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