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物件ごとの収支管理表の作り方|列の例と確定申告の所得・手残りの違い

公開 2026年10月29日 / 大家のセンセイ 編集部

物件ごとの収支管理表(キャッシュフロー表)を作ると、賃料収入や管理費・修繕費、ローン返済のあとに手元へ残るお金の流れが一目で分かります。ただし、ここで出てくる「手残り」の金額は、確定申告で計算する「所得」とは一致しません。減価償却費とローンの元金の扱いが違うためです。この記事では、収支管理表の列の構成の例と、所得と手残りの違いを計算例つきで説明します。この記事は令和7年分の制度で説明します。

収支管理表で何が分かるか

物件を複数持つようになると、毎月どの物件からいくら賃料が入り、管理費や修繕費にいくら出て、ローン返済のあとに手元へいくら残るのかが分かりにくくなります。収支管理表(キャッシュフロー表)は、こうしたお金の出入りを物件ごと・月ごとにまとめた表で、おおむね次のことが見えるようになります。

管理会社から届く収支報告書は、その物件のその月だけの実績です。収支管理表は、複数の収支報告書や領収書の数字を自分で1枚にまとめ、物件をまたいで比較したり、年間を通した傾向を見たりするための表という位置づけです。管理会社の収支報告書に出てくる項目の読み方は管理会社の収支報告書の見方の記事で説明しています。

列の構成の例

表計算ソフトで作る場合、行に月(1月〜12月)、列に項目を並べる形がよく使われます。列の例は次のとおりです。

ローン返済を元金と利息で分けるのは、このあと説明するとおり、確定申告で経費になるのは利息の部分だけだからです。返済予定表から元金と利息を分けて拾う方法は借入金利子の記事で説明しています。固定資産税や火災保険料のように年に1回・数回しか動かない項目は、該当する月の列にまとめて入れるか、年間の行を別に用意しておくと転記が楽になります。

物件数が増えてきたら、物件ごとに表(シート)を分け、別の1枚でその年の合計を並べると、どの物件が手残りを押し上げているか・下げているかを比較しやすくなります。

所得(確定申告の計算)と手残り(キャッシュフロー)の違い

収支管理表で出した「手残り」と、確定申告の決算書・収支内訳書で計算する「所得」は、同じ年の同じ物件でも金額が一致しないことがよくあります。代表的な違いは、次の2つの項目の扱いです。

所得 = 収入 − 必要経費(減価償却費を含む・ローンの元金は含まない)

手残り = 収入 − 支出(ローンの元金を含む・減価償却費は含まない)

必要経費になるのは「総収入金額を得るために直接要した費用」と、その年に生じた業務上の費用です。このうち減価償却費は例外で、実際にお金を払った年ではなく、建物などの取得に要した金額を一定の方法で各年分の必要経費として配分していく手続きなので、現金の支出が無い年でも必要経費になります。つまり、減価償却費は所得の計算では引かれますが、その年にお金が出ていくわけではないので、手残り(キャッシュフロー)には関係しません。建物や設備の減価償却の計算方法は減価償却の記事で説明しています。

反対に、業務のための借入金の利息は必要経費になります(元金は借りたお金を返しているだけで、収入を得るための費用ではありません)。利息の部分は所得の計算でも手残りの計算でも、どちらでも引きます。一方で、元金の返済には実際にお金が出ていくので、手残り(キャッシュフロー)を計算するときは差し引く必要があります。

このほか、年末に受け取っていない家賃(未収)や、まだ払っていない経費(未払い)、翌年分をまとめて払った費用(前払い)なども、所得の計算と実際の入出金の年がずれる原因になります。所得の計算では、家賃は原則として契約で決まった支払日の年の収入にし、経費はその年に支払うことが確定した金額を計上するためです。

必要経費になるもの・ならないものの一覧は不動産所得の必要経費一覧の記事にまとめています。

計算例(年間・1室)

次のような条件の1室について、所得と手残りをそれぞれ計算してみます。収入・経費を計上する年と、実際にお金が出入りする年は同じとします。

項目所得の計算(確定申告)手残りの計算(キャッシュフロー)
賃料・共益費収入1,260,000円1,260,000円
管理手数料△66,000円△66,000円
修繕費△80,000円△80,000円
固定資産税△100,000円△100,000円
火災保険料△15,000円△15,000円
借入金利子△300,000円△300,000円
借入金の元金経費にならない△600,000円
減価償却費△250,000円現金の支出は無い
計449,000円(青色申告特別控除前の所得)99,000円(手残り)

青色申告の場合は、この449,000円から要件に応じた青色申告特別控除を差し引いた金額が不動産所得になります。また、手残り99,000円は所得税・住民税を払う前の金額です。所得449,000円と手残り99,000円の差は350,000円です。これは、手残りの計算で引いた元金600,000円と、所得の計算で引いた減価償却費250,000円の差(600,000円−250,000円=350,000円)にちょうど一致します。元金の返済が減価償却費より大きいあいだは、所得のほうが手残りより多くなります。減価償却費が元金の返済額より大きいあいだ(返済の初めのころに多い)は、反対に所得が手残りより少なくなります。元利均等返済では年が進むほど元金の返済額が増え、建物などの償却が終わるとその資産の減価償却費は計上されなくなるので、年が進むほど所得が手残りを上回りやすくなります。

所得の計算に必要な借入金利子・年末の残高や、土地を取得するための借入金利子(不動産所得が赤字の年に関係します)の詳しい計算は借入金利子の記事で説明しています。

エクセルで始めて、物件が増えたら道具に移る

物件が1〜2件程度までであれば、表計算ソフト(エクセルやスプレッドシート)で収支管理表を作り、毎月の数字を手で入力していくだけでも十分に管理できることが多いです。

一方で、物件数が増えてくると、管理会社ごとに書式の違う収支報告書を毎月転記する作業や、複数物件をまとめた年間集計、確定申告のための所得の計算と手残りの計算を両方そろえる作業が増えていきます。表の列や数式を物件ごとにコピーして増やしていくうち、どこかの物件だけ数式がずれていた、転記を一行飛ばしていた、といった誤りに気づきにくくなることもあります。こうした管理の手間が増えてきたタイミングで、収支報告書や領収書の読み取り、帳簿の作成、確定申告の転記表づくりまでをまとめて行える記帳ツールに移る大家さんも多いようです。

よくある疑問

収支管理表とキャッシュフロー表は同じものですか

呼び方の違いで、内容はほぼ同じと考えて構いません。どちらも、物件ごとの収入・経費・ローン返済・手残りをまとめて見るための表です。確定申告の決算書・収支内訳書とは別のもので、様式が決まっているわけではないので、自分が見やすい列構成で作ることができます。

収支管理表があれば、帳簿は不要ですか

いいえ。収支管理表はあくまで物件ごとの収支をまとめて把握するための表です。この記事のような月別の合計だけの収支管理表では、税務上必要な記帳にはなりません。取引の日付・相手・金額などを記録した帳簿が別に必要です。必要な帳簿の形式(簡易な記帳か、複式簿記か)は、白色申告か青色申告か、受けたい控除の要件によって異なります。収支管理表は、帳簿から集計した数字を転記したり、帳簿を付ける前に大まかな状況を把握したりする用途で使われます。

管理会社の収支報告書の「振込金額」をそのまま手残りの列に入れてもいいですか

手残りの列にはそのまま入れられません。振込金額はローン返済を引く前の金額だからです。手残り(キャッシュフロー)の列に入れるなら、ここからローン返済(元金と利息)と、固定資産税・火災保険料など、大家さんが自分で直接払っていて振込金額に反映されていない支出を引いてください。また、所得の計算に使う場合も、振込金額をそのまま使うことはできません。振込金額は、管理会社がすでに管理手数料や修繕費を差し引いたあとの金額なので、賃料などの収入と、管理手数料・修繕費などの必要経費を総額でそれぞれの列に分けて記帳する必要があります。詳しくは管理会社の収支報告書の見方の記事で説明しています。

大家のセンセイでは、領収書や管理会社の収支報告書、返済予定表を読み取って仕訳を作り、物件ごと・月ごとの収支をダッシュボードのキャッシュフロー表で、決算書の欄ごとの合計を転記表で確かめられます(転記表は申告書そのものではありません。減価償却費などが入っているかは画面でご確認ください)。使い方は使い方ガイド、実際の機能は大家のセンセイでご確認ください。

※ 本記事は一般的な制度の説明です。個別の事情による取り扱いは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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出典・参考